- 改正の背景と目的
- 文部科学省は、「障害者の権利に関する条約」第24条に基づくインクルーシブ教育システムの再構築を中心課題として掲げています。 目的は、障害のある子どもとない子どもができる限り同じ場で学び、個別最適な学びと協働的な学びを両立する教育体制を確立することです。
- 現状の課題(文科省の問題認識)
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- 1. 支援体制の格差と未整備
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- 合理的配慮やICT活用などの**「基礎的環境整備」**が自治体間で大きく異なる。
- 学校によっては、本人・保護者との**「建設的対話」**が不十分で、合理的配慮の提供が形式的。
- 2. 個別計画の形骸化
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- 「個別の教育支援計画」「個別の指導計画」は作成されているが、 実態把握や目標設定が曖昧で、一律の指導が横行している。
- 学校現場では、「○○トレーニング」等、特定の方法を機械的に適用する例が増加。
- 3. 通常学級での対応不足
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- 通常学級に在籍する障害のある子ども(約8.8%)のうち、通級指導を受けているのは約1割にとどまる。
- 教員の支援スキル・校内体制に格差があり、一斉授業に包摂されにくい実態。
- 4. 特別支援学級・学校の偏在
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- 特別支援学級の在籍者が20年間で4倍に増加。 一部では、本来は通常学級でも学べる子どもが過剰に分離されているという指摘も。
- 一方で視覚・聴覚障害校の小規模化が進み、障害種別による教育機会格差も拡大。
- 今後の改正の方向性(検討中の主な論点)
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- 1. インクルーシブ教育の実質化
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- 「共に学ぶ場」の理念を形式的な統合から、内容面での共学へ転換。
- 学習指導要領にも、**社会モデル(障害は環境との相互作用で生まれる)**の観点を明示する方向。
- 2. 合理的配慮と基礎的環境整備の一体化
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- 「合理的配慮」は個別対応だが、それを支えるICT・教材・人的支援などの基盤整備を義務的水準に近づける。
- デジタル学習基盤の標準化(音声入力、読み上げ、表示変更など)を全国的に進める。
- 3. 教員養成と専門性強化
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- 特別支援教育の経験を採用10年以内に全教員が複数年経験する方向を検討。
- 管理職登用の際にも、特別支援教育経験を要件化する案を継続協議。
- 4. 通級指導とセンター機能の拡充
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- 特別支援学校のセンター的機能(助言・巡回指導・教材提供)を明確化し、 通常学級への支援を体系化。
- 高校段階での通級制度も、対象拡大と時間配分の柔軟化を検討。
- 5. 就学制度の再整理
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- 就学先決定は、本人・保護者の意向を**「最大限尊重」**し、市町村教育委員会が総合判断。
- 「就学後の見直し」を制度上明文化し、柔軟な移行を可能にする方向。
- 「認定就学」制度廃止後の運用を再点検。
- 理念的転換のキーワード
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- 「障害の社会モデル」:障害は個人の欠如ではなく、社会側の障壁によって生じる。
- 「合理的配慮」+「基礎的環境整備」の両輪。
- 「建設的対話」:本人・保護者と学校の相互理解に基づく支援決定。
- 「個別最適な学び」と「協働的な学び」:令和の学校教育像との接続。
- 「共生社会の形成」:教育から社会全体への理念的展開。
- 今後の審議スケジュール
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- 令和7年(2025年)10月:WGで改正論点整理開始。
- 2026年度中に中央教育審議会へ報告し、 学習指導要領改訂・制度整備(2027年度以降)へつなげる見込み
会議資料
第1回
第2回
